〜 反応速度式の実装からワックスの異性化・水素化分解、製品品質評価まで 〜
Fischer-Tropsch(FT)合成は、合成ガス(CO+H2)から液体燃料や化学品を製造する基盤技術であり、天然ガス(Gas to Liquid, GTL)、バイオマス(Biomass to Liquid, BTL)、CO2+グリーン水素(Power-to-Liquid, PtL)と原料を問わず適用できる点が最大の特長です。
一方で、FT合成プロセスの成立性は、反応器における転化率の設計や、副生する重質ワックスの製品化技術に大きく依存します。当社は、反応速度式を実装した厳密な反応器モデルを核として、FT合成からワックスの水素化分解・異性化、製品分留に至るプロセス検討を支援します。
FT合成から異性化・水素化分解モデルのフロー概略図
FT合成プロセス検討における課題
収率固定モデルによる検討の限界
概念検討で多用されるAnderson-Schulz-Flory(ASF)分布に基づく収率固定モデルは、原料組成や運転条件を変更した場合の挙動を予測できません。反応器容積・触媒量・除熱条件・リサイクル構成を含めた検討には、反応速度式に基づく反応器モデルが不可欠です。
反応器選定と製品化工程の重要性
FT合成反応は強い発熱反応であり、スラリー床と多管式固定床では転化率・選択率・スケールアップ性・触媒交換性が大きく異なります。さらに、FT合成で副生する重質ワックスを水素化分解・異性化により中間留分へ転換する工程まで含めて、初めて製品収率と製品品質が定まります。プロセス全体を対象とした定量比較が、方式選定の判断材料として重要です。
シムアーツのFT合成モデリング技術
当社は、査読済み文献に記載の速度論やASF分布に基づき、CO2/H2ガスからFT合成、ワックスの水素化分解・異性化、製品分留までを一貫して実装したフローシートモデルをAspen Plus®上に構築しています
Aspen Plus® シミュレーション画面(FT合成・水素化分解・異性化モデル)
① FT合成反応速度式の実装
FT合成反応はLHHW(Langmuir-Hinshelwood-Hougen-Watson)型速度式で記述し、炭素数1〜30の直鎖パラフィンおよび炭素数2~30のオレフィンの生成を炭素数ごとにモデル化しています。触媒種や反応条件の違いによるαの変化にも対応可能なモデルです。お客様の触媒試験データに基づく速度式パラメータの推定にも対応します。
FT合成は、スラリー床反応器を模擬したCSTRモデルにより転化率や触媒量を計算します。多管式固定床のプラグフローモデルへの転用についてはご相談ください。固定床モデルでは管内の温度分布が解析でき、伝熱管本数・管径の設計検討にも活用できます。
② ワックス異性化・水素化分解反応のモデリング
FT合成で副生する重質ワックス(n-パラフィン主体)を中間留分へ転換するには、異性化・水素化分解工程の設計が重要です。当社は、炭素数10〜30の反応群をLHHW型速度式として実装した反応器モデルを保有しています。
反応器は触媒重量基準のプラグフローモデルとし、触媒充填量はワックス処理量に応じて設定しています。これにより、反応温度・圧力・LHSVが留分収率に及ぼす影響のほか、製品中のイソ/ノルマルパラフィン比率を予測できます。イソパラフィン比率はジェット燃料の氷点をはじめとする低温流動性を支配する因子であり、収率と品質の両面から運転条件を最適化できる点が本モデルの特長です。
異性化・水素化分解のイメージ図
※各成分の3次元構造図はNIST Chemistry WebBook (NIST SRD 69, https://doi.org/10.18434/T4D303) より引用。
③ 分離・リサイクル・熱統合を含むプロセスの最適化
生成油は分留塔で製品留分に分離します。オフガスからのH2回収(PSA)・リサイクル、CO2の分離・リサイクル、残ガス燃焼と熱統合までをフローシートに組み込み、カーボン効率・エネルギー効率をプロセス全体で評価します。
多様な原料ルートに対応する適用性
FT合成以降の工程(反応器・水素化分解・異性化・分留)には共通のモデルを用いるため、原料ルート間の比較検討や、原料の切替・混合を想定したケーススタディを効率的に実施できます。
製品性状の予測と燃料規格への適合評価
蒸留曲線、密度、粘度などの製品性状をAspen Plus®の物性計算により求め、ジェット燃料(ASTM D7566)やディーゼル燃料の規格項目と照合することも可能です。文献より取得した推算式を用いて引火点や凝固点を評価し、プロセス条件と製品品質を関連付けた評価が可能です。
コスト積算と経済性評価(TEA)
シミュレーションで得られた物質収支・熱収支に基づき、建設費(CAPEX)・原料コスト・メンテナンスコスト・ユーティリティコストから製品製造原価を算出します。反応器形式・リサイクル構成・原料ルートの違いを経済性の観点から比較するとともに、TEAを組み合わせ、技術的成立性と事業実装可能性を定量的に評価します。
FT合成プロセス検討のご相談
文献調査から速度式を実装したプロセスシミュレーション、最適化、経済性評価(TEA)まで、シムアーツが一貫してサポートします。モデル開発やスケールアップ、コスト評価でお悩みの方は、ぜひ当社にご相談ください。経験豊富なエンジニアが、お客様の課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。


